「パミール」とは、国内最大手の外装建材メーカー「ニチハ」が製造していた、屋根材の商品名です。
製造期間は1996~2008年で、詳しくは後述しますが不具合が多数報告された結果、現在は製造中止になっています。
パミールは一応、現在もっとも普及している屋根材である「スレート屋根」の1つに分類されますが、「スレート屋根とパミールは“別物”である」と捉えたほうがよいかもしれません。
その理由の1つとして、「パミール屋根には塗装を行うことができない」ということがあります。
パミール屋根には、塗装ではなく屋根カバー工事、劣化が酷ければ屋根葺き替え工事を行うことが必要です。
今回の記事では、パミール屋根の問題点やパミール屋根のリフォーム方法、実際にパミール屋根を屋根カバー工事した事例について、解説します。
パミール屋根の問題点
先に述べたように、パミールの製造期間は1996~2008年で、現在は製造中止になっています。
パミールが製造されていた当時は、“屋根材へのアスベスト(石綿)の使用禁止”が始まった時期でした。
そのため建材メーカー各社は、ノンアスベスト製品を、開発・販売する必要に迫られます。
ニチハのパミールも、“ノンアスベスト切り替え直後の製品”のうちの1つです。
パミールは、大手メーカー・ニチハの製品ということで、全国に広く流通しました。
しかし少し年数が経ってから、ひび割れや剥がれなどの不具合が、多数報告されるようになりました。
築7年程度で表面が剥がれはじめ、さらに年数が経つと、ミルフィーユのように層状にパリパリと剥がれていきます。
この不具合に対するニチハの見解は「経年劣化である」というもので、残念ながら、メーカーによるリコール対応(無償修理・交換・返金など)は行われていません。
パミール屋根が製造中止になったのは、それほど昔の話ではない(2008年)ため、現在でもパミール屋根のお家は多く見られます。
屋根がパミールかどうか、どうやって見分ける?
パミール屋根の劣化症状には、特徴があります。
- 層間剥離(ミルフィーユのように層がパリパリ剥がれる)
- 屋根の先端が白っぽくシミになる
- 専用釘が腐食して屋根材がズレる
とはいえもちろん、上記のような分かりやすい劣化が、目視できる範囲では起きていないこともあります。
屋根がパミールかどうかを知りたいならまず、新築時の「図面」や「仕上げ表」を探してみてください。
屋根材のメーカーや製品名が、記載されているはずです。
ただし業者によっては、単に「スレート葺き」としか書いていないケースや、何も書いていないケースがあります。
そのような場合や、素人判断では心配だという場合は、1度屋根の専門業者に依頼して、屋根の種類や劣化状況を見てもらってください。
なお、自分でしっかり確かめようとして、屋根の上に上がる行為は、大変危険ですので絶対にお止めください。
パミール屋根のリフォーム方法
パミール屋根のリフォーム方法は、「屋根カバー工法」が主流です。
もしも劣化が酷ければ、「屋根葺き替え」を行うことになります。
パミール屋根に塗装はできない!
「築年数が浅いし、塗装でもいい?」と思われるかもしれませんが、残念ながら、パミール屋根には塗装を行うことができません。
その理由は、屋根材自体がパリパリとミルフィーユ状に剥がれている・剥がれそうな状態で、上から塗装をしたとしても、すぐに塗装ごと剥がれてしまうためです。
なお、パミールについて無知な業者が工事にあたり、パミール屋根だと気付かずに塗装を行ってしまったケースもあるようです。
このようなケースでは、塗装はすぐに屋根材ごと剥がれてしまい、結局屋根カバー工事・屋根葺き替え工事を改めて行うことになり、屋根塗装1回分の費用(約100万円)が無駄になってしまいます。
パミール屋根の工事は「屋根カバー工法」が主流
パミール屋根のリフォーム方法で主流なのが、「屋根カバー工法」です。
屋根カバー工法とは、既存の屋根材を撤去することなく、既存の屋根材の上から新しい屋根材を被せる工法のことです。
昔は、屋根が傷んだら「屋根葺き替え」をすることが定番でしたが、軽量な屋根の開発が進んで、重ねても耐震性・耐久性に問題がないことから、「屋根カバー工法」が普及しました。
パミールは「軽量スレート屋根」の一種であり非常に軽いため、屋根カバー工法が可能です。
屋根カバー工法には、様々なメリットがあります。
- 既存の屋根材を撤去しないので、葺き替えよりも安価
- 屋根が2重になるので、断熱性・遮音性に優れている
- 葺き替えと比べて、工事期間が短い
- 葺き替えと比べて、廃材が少ない
工事費用は一般的な広さの戸建て住宅(約30坪)で、80~150万円です。
<関連コラム>
⇒ 屋根カバー工法のメリット・デメリットを解説!実際の施工事例も紹介
パミール屋根の劣化が酷い場合は「屋根葺き替え」を行う
先述したように、パミール屋根のリフォームは「屋根カバー工法」が主流ですが、屋根材が水分を含んでいる場合は「屋根葺き替え」を選びましょう。
なぜなら、屋根材が水分を含んでいる状態で屋根カバー工事を行うと、内部に含まれた水分が逃げ場を失って留まり、結露や雨漏りを起こしてしまうことがあるためです。
屋根の葺き替え工事とは、現在の屋根材を撤去し、新しい屋根材に付け替える工事のことです。
屋根材の下にある下地板やルーフィングシートなども補修・交換するため、まさに“屋根丸ごと”の取り替えです。
新しい屋根材はパミールより軽いことがほとんどですので、屋根全体が軽くなり、耐震性が高まるというメリットがあります。
屋根の葺き替えを選んだほうがいいのは、以下のようなケースです。
- 新しい屋根材を固定できないほどパミールの劣化が激しい
- すでに雨漏りなどが起きている
- 既に屋根カバー工法をしたことがある
(屋根カバー工法は1回きりしかできません)
工事費用は一般的な広さの戸建て住宅(約30坪)で、100~200万円です。
<関連コラム>
⇒ 【保存版】屋根の葺き替え工事の費用やおすすめ屋根材、施工の流れを紹介!
⇒ 「屋根葺き替え工事」と「屋根カバー工法」の違いを比較したい!事例と一緒に分かりやすく紹介
パミール屋根に屋根カバー工事を行った事例
以下では、当社が実際にパミール屋根に屋根カバー工事を行った事例を5つ、紹介します。
【1】コケが発生しているパミール屋根をカバー工法で工事 兵庫県宝塚市
- 工事概要:屋根カバー工事・雨樋工事・外壁コーキング工事
- 施工費用:総額210万円(税込)
- 施工面積:88㎡(屋根)
- 屋根の形:棟違い屋根
- 工期 :7日間(屋根のみ)
兵庫県宝塚市で、パミール屋根の屋根カバー工事などを行いました。
「屋根が劣化している」とお問い合わせをいただき、現地で確認したところ、パミール特有の層間剥離のほか、コケの発生などが見られました。
幸いにも雨漏りは発生していなかったため、屋根カバー工法を提案しました。
コーキングも劣化が目立ち、むき出しになっている部分がありましたので、すべて新しく打ち直し、綺麗に仕上がりました。
<詳しくはコチラ>
⇒ 兵庫県 宝塚市 屋根重ね葺き工事(スマートメタル)・雨樋工事・外壁コーキング工事
【2】経年劣化したパミール屋根をカバー工法で工事 兵庫県宝塚市
- 工事概要:屋根カバー工事・一部外壁コーキング工事
- 施工費用:総額133万円(税込)
- 施工面積:84㎡(屋根)
- 屋根の形:棟違い屋根
- 工期 :7日間
兵庫県宝塚市で、パミール屋根の屋根カバー工事などを行いました。
元々はお隣のお家で屋根工事を行っていたところ、今回のお客様よりお声掛けをいただき、「うちの屋根も劣化が気になる」ということで、現地調査を行い工事に至りました。
劣化は見られたものの深刻ではなく、雨漏りもなかったので、屋根カバー工法を提案しました。
<詳しくはコチラ>
⇒ 兵庫県 宝塚市 屋根重ね葺き工事(スマートメタル) ・一部外壁コーキング工事
【3】パミール屋根をカバー工法で工事し天窓を撤去 大阪府枚方市
大阪府枚方市で、パミール屋根の屋根カバー工事などを行いました。
また、既存屋根には天窓が4つ取り付けられていたのですが、天窓は雨漏りリスクが高いため、今後の雨漏りのことを考えてお客様と相談し、撤去させていただくこととなりました。
既存のパミール屋根は全体的に色あせ、艶感が失われていました。
新しい屋根材には、「スーパーガルテクト」を採用しました。
大幅な軽量化を実現しており、耐久性も高く、屋根カバー工法に向いている素材の1つです。
<詳しくはコチラ>
⇒ 大阪府枚方市で行ったニチハ『パミール』のカバー工事をご紹介します。
【4】ミルフィーユのようにサクサク割れているパミール屋根をカバー工法で工事 京都市中央区
- 工事概要:屋根カバー工事・一部コーキング打ち直し工事
- 施工費用:総額81万円(税込)
- 施工面積:40㎡(屋根)
- 屋根の形:切妻
- 工期 :2日間
京都市中央区で、パミール屋根の屋根カバー工事などを行いました。
「屋根が劣化している」とお問い合わせをいただき、現地調査を行ったところ、パミール特有の劣化(ミルフィーユのようにサクサク割れている)が確認できました。
幸いにも雨漏りは発生していなかったため、屋根カバー工法を提案しました。
また外壁のコーキングも一部取れていたため、打ち直しを行いました。
<詳しくはコチラ>
⇒ 京都市中京区 屋根重ね葺き工事(スーパーガルテクト)・一部コーキング打ち直し工事
【5】台風でめくれあがったパミール屋根をカバー工法で工事 大阪市東淀川区
- 工事概要:屋根カバー工事
- 施工費用:45.5万(足場代除く)
- 施工面積:42㎡
- 屋根の形:切妻
- 工期 :1日
大阪市東淀川区で、パミール屋根の屋根カバー工事を行いました。
「3年前の台風で屋根材が一部めくれあがってしまい、そのままにしているので何とかしたい」とお問い合わせをいただき、現地調査に伺いました。
お客様の仰る通り、一部にめくれそうな箇所はあるものの、雨漏りはしていなかったため、屋根カバー工法を提案しました。
<詳しくはコチラ>
⇒ 大阪市 東淀川区 屋根カバー工法 (スーパーガルテクトへ)
まとめ
以上、パミール屋根の問題点や、パミール屋根のリフォーム方法、パミール屋根のカバー工事の事例などを、解説しました。
パミール屋根は劣化が早く、リフォーム方法も限られている(塗装ができない)屋根材です。
既存の屋根がパミールだと分かっている人はもちろん、「パミールかどうか分からない」という人も、1度屋根の専門業者に依頼して、今の屋根の状況を点検してもらうとよいでしょう。