屋根カバー工法という工事には、皆さんが想像されているように多くのメリットがあります。
工事が安く済む・早く済むことなどは特に、屋根カバー工法の大きなメリットです。
しかしもちろん、屋根カバー工法にはデメリットもありますし、そもそも全ての屋根に屋根カバー工法が採用できるわけではありません。
今回のコラムでは、屋根カバー工法のメリットを知りたい人に向けた、屋根カバー工法の基本的な情報を年間2,000件の実績を持つ『ゼファン』が分かりやすく解説していきます。
屋根カバー工法とは何なのか?
屋根カバー工法とは、“既存の屋根材の上から新しい屋根材をかぶせる”工法のことです。
“屋根を塗装する”、そして“屋根を葺き替える”以外の屋根メンテナンスの選択肢となります。
詳しくは後述しますが、既存の屋根の上にルーフィング材をはり、その上に軽量の屋根材をはって施工します。
葺き替え工事のように既存屋根の解体・処分を行わないため、費用を安くできるうえに、廃材が少なくて済むエコな工法です。
今の屋根がスレート屋根・金属屋根・アスファルトシングル屋根の場合、基本的には屋根カバー工法で工事できます。
いっぽう、今の屋根が瓦屋根の場合は、屋根カバー工法で工事できません。
他にも屋根カバー工法より葺き替えのほうが向いている条件はありますが、それは後に解説していきます。
屋根カバー工法の5つのメリット
- 工事費用を安く抑えられる
- 工事の期間が短い
- 屋根の防音性や断熱性が高まる
- アスベストの飛散リスクが低い
- 屋根の構造材がほとんど傷まない
上記は、屋根カバー工法で得られる主な5つのメリットです。
それぞれ、以下で解説していきましょう。
【1】工事費用を安く抑えられる
先にも少し述べたように、屋根カバー工法は既存の屋根材を残したまま施工するため、屋根材の撤去費用・廃材の処分費用がほとんどかかりません。
(屋根カバー工法で処分するのは、棟板金や貫板のみです。)
よって、屋根材を交換する葺き替え工法よりも、費用が安く抑えられるというメリットがあります。
【2】工事の期間が短い
先にも述べましたが、屋根カバー工法は解体・撤去の工程がほとんどないことから、工事期間が短く済む場合が多いです。
葺き替え工法で10日間かかる場合、屋根カバー工法なら7日程度で工事が終わると推測できます。
工事が短く済むということは、騒音や人の出入りなどのストレスに耐える時間が短くて済むということです。「ご近所の迷惑になっているのでは?」と不安に思う時間も減らせます。
先ほど屋根カバー工法のメリットの1つとして、工事費用を安く抑えられることを挙げましたが、工事の期間が短いこととも関係しています。
【3】屋根の防音性や断熱性が高まる
断熱性のある屋根材を屋根カバー工法に採用することで、屋根の断熱効果を高めることができます。
屋根の断熱がよく機能すると、お部屋の冷暖房効率が上がります(=電気代などを抑えられる)。
また屋根カバー工法により、既存の屋根材と併せて2重の屋根に仕上げることで、屋根に当たる雨音が小さくなるなど、防音性のアップも期待できます。
さらに、屋根カバー工法ではルーフィング材(防水シート)を必ず施工するため、屋根の防水性能が上がり、雨水の浸入を食い止めやすくなります。
【4】アスベストの飛散リスクが低い
屋根カバー工法は、解体工事を行わない工法なので、アスベストの飛散リスクが低いです。
とはいえ、アスベスト屋根の問題を先送りにするのは、よくありません。
できるのであれば、屋根の状態が良いうちにアスベスト含有の屋根材を撤去したほうが良いので、屋根カバー工法で対処するか葺き替えで対処するか、専門業者によく相談してみましょう。
【5】屋根の構造材がほとんど傷まない
葺き替え工事のために屋根材をはがす時、無理な力を加えてはがしてしまうと、屋根の構造材である野地板や垂木(たるき)に負荷がかかり、傷んでしまうリスクがあります。
もちろん、そのようにずさんな工事をする業者を選ぶこと自体を避けたいですが、”100%”避けることは難しいです。
屋根カバー工法であれば、屋根の構造材に手を加えることはないので、極論ですがどんな業者でも屋根の構造材を傷めることはないでしょう。
屋根カバー工法の4つのデメリット
- 屋根が重くなる
- 使用可能な屋根材が限られている
- 屋根カバー工法は1度きりしかできない
- 火災保険の修繕で屋根カバー工法を行う場合、補償対象外となることがある
屋根カバー工法には、主に工期・費用面で大きなメリットがあるいっぽうで、上記のようなデメリットもあります。
先述のメリットと比較しながら、屋根カバー工法を選ぶべきかどうか考えるとよいでしょう。
【1】屋根が重くなる
屋根カバー工法は、既存の屋根材をはがさずに新しい屋根材を重ねる工法なので、軽量の屋根材を選ぶといえども、屋根が重くなってしまいます。
耐震性への影響は軽微とされているものの、住宅に全く負担がかかっていないかといえば、やはり少しはかかっているということになると思います。
よって壁量が不十分な住宅や、壁の配置がアンバランスな住宅には、屋根カバー工法は適しません。
【2】使用可能な屋根材が限られている
先にも述べたように、屋根カバー工法に使う屋根材は軽量でなくてはいけません。
見た目や質感が気に入った屋根材を自由に選べるわけではないことが、人によっては大きなデメリットでしょう。
【3】屋根カバー工法は1度きりしかできない
屋根カバー工法は、1度きりしか行えません。
理由は単純で、2重になっている屋根にさらに屋根材を追加したら、屋根が重くなりすぎて住宅に大きな負担がかかってしまうためです。
【4】火災保険の修繕で屋根カバー工法を行う場合、補償対象外となることがある
台風・強風で屋根が破損したケースで、修繕に屋根カバー工法を選ぶ場合、補償の対象外となることがあります。
火災保険で補償金の申請をする場合、”被害に遭う前の状態に戻すこと”を前提にした見積書を提出する必要があり、屋根カバー工法ではこの”元に戻す”という観点で審査に引っかかってきます。
そもそも、台風・強風で屋根が破損したケースでは、下地まで劣化していることが多いです。下地から補修できる葺き替え工事のほうが、適しているでしょう。
屋根カバー工法がオススメできるケース
- 費用の安さを重視するケース
- アスベストが住宅に含まれているケース
- 10~15年以内に住宅を転居・解体する予定があるケース
上記のようなケースで、屋根カバー工法をオススメできます。
先に述べたように、屋根カバー工法は工期が短く費用が安い工法ですし、アスベストの飛散リスクが少ないです。
また、10~15年以内に住宅を転居・解体する予定があるならば、”1回きり”しか行えない屋根カバー工法でも、重ねる屋根材の耐用年数的に不都合はありません。
屋根塗装だけでは解決できない問題がある時かつ、屋根の下地にダメージがない時は、屋根カバー工法を前向きに検討するとよいでしょう。
屋根カバー工法よりも「葺き替え」工法が適しているケース
- 屋根から雨漏りを起こしたことがあるケース
- 将来的に増改築などの工事予定があるケース
- 地震でよく揺れる家であるケース
- 屋根にスレートや瓦を使いたいケース
上記のようなケースでは、屋根カバー工法よりも、葺き替え工法が適しています。
雨漏りを起こしたことがある屋根の場合、下地材まで傷んでいる可能性が高く、葺き替え工事の過程で野地板の補修・補強を行うほうがよいと思われます。
また、屋根カバー工法は耐震性への影響は軽微であるとはいえ、地震でよく揺れる家に施工すると、住んでいる人の不安感(「大丈夫かな、壊れないかな?」)が増してしまうかもしれない、という考え方もあります。
そして屋根材を自由に選びたいケースでは、屋根カバー工法よりも葺き替え工事のほうが、確実に屋根材の選択肢は広がります。
先に述べたように、1度屋根カバー工法をしたことがある屋根では、次のメンテナンス時に”葺き替え工事を選ぶしかない”のでご注意ください。
屋根カバー工法の施工の流れ
- 足場を設置する
- 棟板金・貫板を撤去する
- ルーフィング材(防水紙)を敷く
- 新しい屋根材を葺く
- 貫板・棟板金を設置する
- 棟板金にコーキング処理をする
上記は、屋根カバー工法の施工の大まかな流れです。
以下で簡単に説明していきましょう。
【1】足場を設置する
まずは、足場を組みます。職人の作業スペースです。
またこの足場は、材料やゴミが飛散しないようにメッシュシートで建物を囲うためにも必要です。
【2】棟板金・貫板を撤去する
屋根カバー工法で撤去するのは、屋根材の頂上にある「棟板金」と、その下地の「貫板」です。
「雪止め」が設置されている場合も、併せて撤去を行います。
【3】ルーフィング材(防水紙)を敷く
既存の屋根材の上から、新しいルーフィング材(防水紙)を敷きます。
屋根の防水性のアップに繋がる工程で、軒先からしっかりとルーフィング材を敷くことで、屋内への雨水の浸入を防ぐことができます。
【4】新しい屋根材を葺く
ルーフィング材の上から、新しい屋根材を葺いていきます。
屋根の軒先側から、ビスおよび釘でしっかりと留めます。
【5】貫板・棟板金を設置する
新しい貫板、および棟板金を設置します。
【6】棟板金にコーキング処理をする
棟板金が重なり合うわずかな隙間から、雨水が侵入することがないように、コーキング材で隙間を埋めます。
基本的にはここまでできたら、足場を解体して工事は完了となります。
《屋根カバー工法の耐用年数》
屋根カバー工法で施工した屋根の耐用年数は、20年~30年です。
住宅の立地条件や、かぶせる屋根材の種類によって変わってきます。
屋根カバー工法の施工事例
以下では、年間2,000件の屋根工事を行う当社『ゼファン』が実際に行った屋根カバー工法の実例を、いくつか紹介します。
【事例1】豊中市で行った屋根カバー工法
- 施工費用 105万円
- 施工面積 79㎡
- 屋根の形 寄棟
- 工期 2日間
- 施工時期 3/16~3/17
大阪府豊中市の住宅で、屋根カバー工法を行った事例です。
新しい屋根材には、軽量かつ優れた遮熱性・断熱性を持つ『スーパーガルテクト』を採用しました。
屋根の形が寄棟なので、切物が多い点が大変でしたが、とても綺麗に仕上げることができました。
《詳しくはコチラ》
⇒ 『大阪府 豊中市 屋根重ね葺き工事』の事例
◆屋根材『スーパーガルテクト』について
『スーパーガルテクト』は、屋根材表面に施された遮熱塗装と、ガルバリウム鋼板と一体化した断熱材により、遮熱性能・断熱性能におおいに優れています。
また、『スーパーガルテクト』は軽いとされる通常スレート屋根の、さらに4分の1程度にまで軽量化しているため、住宅の耐震性に大きな影響を与えません。
【事例2】交野市で行った屋根カバー工法+太陽光発電パネル脱着
- 施工費用 268万
- 施工面積 191㎡
- 屋根の形 寄棟+谷
- 工期 1週間
- 施工時期 1/10~2/14(足場工事含む)
大阪府交野市の住宅で、屋根カバー工法と太陽光発電パネルの脱着を行った事例です。
新しい屋根材には、表面に自然石粒を施した高耐久型の『ディプロマット』を採用しました。
工事前に既存の太陽光発電パネルを外し、屋根カバー工事が終わった後に既存の太陽光発電パネルを戻しました。
パネルは屋根材に引っ掛けて、掴み込む工法で固定しています(屋根材に穴を開けていません)。
《詳しくはコチラ》
⇒ 『大阪府 交野市 屋根重ね葺き工事・太陽光脱着工事』の事例
◆屋根材『ディプロマット』について
『ディプロマット』は、表面に小さい石粒が施された屋根材です。この石粒の凸凹には雨粒を拡散させる効果があり、通常の平滑な表面に比べ雨粒が小さくあたる=雨音が小さくなります。
石の摩擦抵抗が強いことと、石が蓄熱特性を持っていることから、積雪地域の施工にもオススメできます。価格帯も比較的リーズナブルです。
屋根カバー工法を依頼する業者の選び方
- 屋根カバー工法のデメリットもきちんと説明してくれる業者
- 葺き替え工事のこともきちんと説明してくれる業者
屋根カバー工法を依頼するなら、上記のような業者を選びましょう。
屋根カバー工法はメリットの多い工法ですが、屋根カバー工法”ばかり”を推してくる業者は、あまりよくありません。
本来、顧客のことを一番に考えるなら、メリットだけでなく屋根カバー工法のデメリットも説明して、葺き替え工事という選択肢も示す必要があります。
しかし、屋根カバー工法は工期が短く回転率を上げられる、いってしまえば業者にとって”おいしい”工事でもあることから、強引に屋根カバー工法を勧めてくる業者もいるらしいのです。
そうした業者に屋根のメンテナンス工事を任せることには、やはり不安があります。
《屋根カバー工法の見積もりは複数業者から取ろう》
屋根の工事というのは、「定価」というものが存在しない商品です。
適正金額を掴むためにも、少々手間ではありますが、少なくとも3社くらいからは見積もりを取って、掲示金額や接客の品質を比べることをオススメします。
《屋根カバー工法ができる職人さんは少ない!依頼はお早めに》
屋根カバー工法を行う業者は、板金の職人さんです。塗装や瓦葺きの職人さんと比べて、数が少ないことが現状です。
特に近年、金属屋根工事の需要が増えているためか、板金工が慢性的な人手不足に陥っています。
大型台風や地震などの自然災害が起きた場合、依頼はさらに増加し、かなり先のほうまで工事を待たなくてはいけないケースもなくはありません。
屋根カバー工事の依頼には余裕を持って、早めに依頼をすることが得策でしょう。
まとめ
以上、屋根カバー工法のメリット、そしてデメリットを解説しました。
屋根カバー工法の工事の流れも、大まかには把握していただけたかと思います。
- 屋根のメンテナンス費用を安く抑えたい
- 屋根の工事期間は短いほうがいい
- 屋根の下地が傷んでいない(雨漏りしたことがないなど)
上記のようなケースでは、屋根カバー工法が向いている可能性は高いです。
屋根カバー工法のメリット・デメリットをきちんと説明してくれる専門業者に相談して、工事を行ってもらいましょう!
⇒ 大阪で屋根カバー工法の工事を行うなら実績豊富な『ゼファン』にお任せください。